MAR 27, 2019

INTERVIEW

KISSから環境保全まで。
商品開発を通して、研究を社会に実装する

KISS LABO

INTRODUCTION

近畿大学とUHA味覚糖株式会社が連携して取り組むACT(アクト)プロジェクト「KISS LABO」。「KISS力をUPさせる夢のキャンディ開発を目指す」ことをテーマに、学生が自由に集い、アイデアを発散できる公園型共創スペースとして、2017年に誕生しました。現在では、地方自治体ともプロジェクトを行うなど、活動の場が広がっています。

プロジェクトの成り立ちから活動内容、今後の取り組みまでを、生体成分を分子レベルで分析する機能解析を専門とする近畿大学薬学部 多賀淳准教授と、UHA味覚糖株式会社の企画開発部の齋藤はるひさん、そして「KISS LABO」プロジェクトメンバーの学生のみなさんにお話をお伺いしました。

近大発、産学官連携プロジェクト

近大の資源を活かした化粧品・食品開発

多賀:僕の専門は、生体成分を分子レベルで分析し、その機能を解析すること。例えば、魚一つとっても、皮、身、骨で全て成分が異なります。その中で特にコラーゲンを取り出して、機能や構造を調べるための分析を得意としています。食品や化粧品をつくる時に直結する研究であることもあり、UHA味覚糖さんと共同研究をスタートさせました。

多賀 淳 薬学部准教授

KISS LABO」の前身は、ビューティケア商品ブランド「美はお口から研究所」。UHA味覚糖さんと共同で、近大まぐろの海洋性コラーゲンを使った化粧品を開発したことに始まります。その後、「KISS LABO」としてリスタートし、口から摂取するものは全て体をつくる元になるという考えのもと、化粧品や食品の開発をしています。

左:薬学部3回生 鶏内 遥さん、中央:薬学部5回生 監物 杏菜さん、右:薬学部5回生 奥野 人美さん

奥野:先生の研究室に所属しながら、「KISS LABO」のコアメンバーとしても活動しています。研究しているコラーゲンを使ったお菓子の開発に関われる企画があると知り、おもしろそうだなと思ったことが参加のきっかけです。

監物:立ち上げから関わらせてもらっています。研究しながら商品企画や企業との商談に関わることができるのは、近大の中で「KISS LABO」だけなのでとても貴重な経験ができる場だと思います。実際にマグロの皮を刻んで、コラーゲンを抽出する一連の過程を全て自分たちの手を動かして製品化までこぎつける経験は、なかなかできません。

鶏内:私は製品開発や化粧品に関心があったので「KISS LABO」に参加しました。「KISS LABO」で活動するうちに、多賀先生の研究にも興味を持つようになり、海藻の成分を使った新しい化粧品開発のプロジェクトもこれから始まるところです。

社会課題を解決する産学官連携のハブ

UHA味覚糖さんとは、地方自治体と一緒に、海洋保全や森林の生態系の保持といったSDGs(持続可能な開発目標)に関するプロジェクトも展開しています。漁協との共同研究では、海洋保全につながる商品企画を進めました。プロジェクトにはいくつかの企業が関わってくるので、「KISS LABO」は企業と一体となってそういった保全活動をやりやすい場でもあります。

商品を買ってくれた人が喜んでいる姿を見ると、嬉しいですしやりがいを感じます。

奥野 人美

薬学部5回生

奥野:漁をするときに網に引っかかって邪魔者扱いされ、廃棄されがちな海藻の成分を分析し、使い道を考えて商品化を行いました。研究室で実験するだけではなく、漁船に乗って漁師さんにお話も聞きに行きました。実際に製品化されたあとも販売促進活動に参加し、店頭で商品を売ることもあります。海洋保全というだけではなく、地域活性化にも繋がりますし、何より商品を買ってくれた人が喜んでいる姿を見ると、嬉しいですしやりがいを感じます。

監物:梅干しを生産する時に梅酢が上がるのですが、それを海に流すと海洋保全によくないというご相談があって。梅酢を製品化できないかと考え、熱中症対策のための塩分補給食品を開発しました。他にも柿の皮が廃棄されていることに着目し、特殊な製法で粉にすることで食品や化粧品に利用できないか検討中です。

「KISS LABO」を通して、学生は自分の研究が社会にどう生かされているのか実感し、それがまた研究へのモチベーションにつながっている。研究と実学の両方があるからこそ、良いシナジーが生まれています。

多賀 淳

薬学部 准教授

廃棄されていた梅酢や柿の皮を再利用することは海洋保全や陸上の環境保全に繋がりますし、一次産業者の無賃労働を減らす目的も含まれています。「KISS LABO」を通して、学生は自分の研究が社会にどう生かされているのか実感し、それがまた研究へのモチベーションにつながっている。研究と実学の両方があるからこそ、良いシナジーが生まれています。

社会を知ったことで広がる進路選択

監物:研究室で成分分析したものが製品化される過程を見ることで、研究の意義を感じることができました。卒業後は研究開発職に就く予定です。会社の中では、製品化までを近くで見ることはできないかもしれませんが、「KISS LABO」での経験があれば製品化まで考えた研究開発ができるのではと思います。

鶏内:将来は化粧品に携わる仕事をしたいと思っていたのですが、具体的には考えられていませんでした。しかし「KISS LABO」に参加し、多先生の研究室で学ぶ中で、化粧品の開発や企画の方面に進みたいと道が定まりました。

UHA味覚糖とコラボ商品を、3ヶ月で生み出せ!

大人版就業体験「KISS LABO Challenge

左から、農学部1回生 森実 優さん、短期大学部2回生 大西 真亜凛さん、文芸学部3回生 笹部 実花さん、生物理工学部3回生 森本 あずささん

KISS LABO Challenge」は、年に一度実施する短期プログラム。UHA味覚糖とお菓子開発をしたい学生を集めて、マーケティングに関する講義から始めて、企画、デザインから製品化までを約3ヶ月で体験してもらいます。その後、各種手続きに時間を要しますが、実際に商品となったものができあがると、商談やPRにも参加してもらいます。毎回4050名の学生が参加し、5~6名のチームに分け、実際に商品企画をUHA味覚糖に提案します。提案の中で良い企画があれば、商品化に向けて動き出します。今回集まった学生チームは、近々提案したお菓子が商品化される予定です。

これまでに「KISS LABO Challenge」で商品化されたお菓子

森本:大学の売店で「まぐろの目玉グミ」が売っていて、近大の学生が考えたと知った時に、私もやりたいと思い、すぐ調べて応募しました。

大西:商学を学んでいるので、自分の学んだことを活かせるかもと思い、参加しました。

笹部:私は文芸学部文化デザイン学科に在籍していて、パッケージデザインをやってみたいと思っていて。授業では実際に商品デザインをする機会はないので、おもしろそうだと思いました。

森:お菓子の商品開発がしたくて農学部を選んだのですが、授業の中で商品開発に携わる機会はありません。これが私の求めていたものだと思い、嬉しかったですね。

KISS LABO Challenge」は全学年・全学部学科対象なので、彼女たちのように、さまざまな専門分野をもつ学生が集まっています。

ピュアな想いが詰まったキャンディー開発

笹部:私たちのチームでは、まず近大で作られているものを使ってお菓子を作ることを決めました。材料を探すうちに、蜂蜜の機能研究のために飼育されている蜂が作る近大ハニーがあり、食用にも利用できるため、商品化に適しているのではと仮説を立てて。蜂蜜に合う材料やお菓子の種類、自分たちがどんなお菓子を作りたいのかを考え、近大ハニー入りのミルクキャンディにたどり着きました。

森本:ミルクに蜂蜜を入れて飲む人がいる、という話からヒントを得て。それで特濃ミルク8.2(ハニー)と名付けて、6108円で販売することが決まりました。

齋藤:原価計算や値付け、パッケージデザインなどはUHA味覚糖もサポートして、一緒に考えていきました。

UHA味覚糖 齋藤 はるひさん

笹部:学生は小さい方が持ち運びがしやすいとか、チャックが付いている方がカバンに入れやすいよねとか、チームで意見を出しながら、最終的に大きさやパッケージを決定しました。108円なら、学生も手を出しやすいですよね。

学生のみなさんはとてもピュアで、大学生活にこんな商品があったら嬉しいという気持ちから純粋に商品開発をされる姿が印象的でした。

齋藤 はるひ

UHA味覚糖

齋藤:やはり学生のみなさんのアイデアは新鮮で。長年会社にいると、大学生活でどんなものが欲しいかわからなくなってきますし、会社員である以上、採算が取れるかを気にしながら商品開発をします。でも、学生のみなさんはとてもピュアで、大学生活にこんな商品があったら嬉しいという気持ちから純粋に商品開発をされる姿が印象的でした。

学部ごとの専門分野を活かしあうことで広がる可能性

森本:私が所属する生物理工学部食品安全工学科では、食品に関する知識は学べますが、実際に商品企画を考えて、プレゼン、商品化まで取り組む機会はありません。商品開発のプロセスを学べたことは、とても大きな経験になりました。将来は食品企業に就職し、アイデアを形にする企画職に就きたいです。

それぞれの得意分野を活かしながら、チームとして取り組めたことが、最終的にアイデアの商品化につながったと思います。

笹部 実花

文芸学部3回生

笹部:理系メンバーは、食品成分分析に詳しかったですし、私はデザインを学んでいるので発表用のパワーポイント作成を担当しました。学部も学年もみんなバラバラですが、それぞれの得意分野を活かしながら、チームとして取り組めたことが、最終的にアイデアの商品化につながったと思います。

齋藤:チームワークがよく、みなさん企画のセンスが良いなと、伴走しながら感じました。みなさんが卒業後、どのような進路を選び、どう社会で力を発揮するのか楽しみにしています。

KISS LABO」は通年活動するコアメンバーや、「KISS LABO Challenge」の参加学生以外も自由に出入りできる公園型共創スペースです。誰もがアイデアを発散できるようホワイトボードを設置したり、アイデアシートを常備して提案できる環境を整えています。

専門機器を使った肌チェックイベントや、UHA味覚糖の管理栄養士が在中し栄養指導を行う機会も設けています。商品開発に関心がある人も、「KISS LABO」が気になっている人も気軽に遊びに来てほしいです。

立ち上げから2年が経ち、「KISS LABO」の学内認知度も上がってきました。今後はもっと多くの学生に実学の機会を提供できるような環境を整えながら、大学の研究を社会貢献につなげるプロジェクトを生み出していきたいです。

 

近大の教育の柱の一つである実学。しかし、授業の中で全てをカバーすることは難しいものです。ACTにはそれを十分に補い余るほどの経験ができる環境があります。今の研究がどう社会に活かされるのか? 講義で得た知識は会社の中でどう発揮できるのか? 商品開発のプロセスを体験することで、授業で得た知識にリアリティが持たらされ、あなたの武器になるはず。

社会へ一歩を踏み出したい方は、「KISS LABO」をのぞいてみてはいかがでしょう。

EDITING TEAM

  • Writer

    北川 由依

  • Photographer

    北村 渉