MAR 27, 2019

INTERVIEW

”GEEK”が新しい価値を生み出す。
学生に伴走しながら起業家を育てる

KINDAIインキュベーションファクトリー

INTRODUCTION

偏差値では測れない、新しい基準を持つ大学になるーー。近畿大学が掲げる指針を達成するためには、何が必要か? たどり着いた答えの一つが、ACT(アクト)プロジェクトの「インキュベーションファクトリー」です。

2017年の発足から2年。「インキュベーションファクトリー」は、KINDAI発で世の中を変えるプロジェクトとして、起業家人材、近大発ベンチャー企業の輩出を目的とした教育・育成・支援を行っています。本記事では、アカデミックシアター事務室 主任 寺本大修さんと、金子由依さん、そして学生の山本拓弥さん、佐々木智哉さんにお話をお伺いしました。

突き抜けた思考をサポートし、事業につなげる

孤独になりがちなGEEKが共に成長しあえる場

寺本:ACT完成を機に、近大に新しい教育的な柱をつくりたいと考えたところから、「インキュベーションファクトリー」の構想はスタートしました。近畿大学出身の社長数は全国7位・西日本1位を誇ることもあり、学生には親が会社の社長や役員をやっている子が数多くいます。また、自ら01で事業を起こし起業している卒業生もいます。しかし、大学として研究、教育活動の一環として01で事業を起こせる人材を生み出す仕組みはまだ本格的に始まっていませんでした。

僕は前職で、新規事業開発の仕事をしていて、世の中が急激に変化する時代において企業が求めるスキルは、起業家的思考力であると気づきました。必ずしも起業家である必要はなく、あくまで新しい価値を創造できる人という意味です。そこでACTに「インキュベーションファクトリー」を設けることを提案し、2017年からプログラム作りに取り組んでいます。

アカデミックシアター事務室 寺本 大修さん

寺本:「インキュベーションファクトリー」に集まる学生像を描いた時、キーワードとなったのがGEEKであることです。これは、何か一つ突き抜けたものを持っている人のことを指します。世界的に有名な起業家を思い出しても、みなさん圧倒的なスキルやカッコよさをお持ちの一方で、どこか変わっていらっしゃいますよね。僕はGEEKであることは、孤独であることとイコールだと思っていて。だからこそ、GEEKな学生が「インキュベーションファクトリー」に集うことで、孤独を共有し、前を向いて成長していける場にしたいと考えました。

「インキュベーションファクトリー」が、起業家を志す学生が共に成長しあえる場、ビジネスを作り上げていく仲間を見つけられる場としてあることは、大きな意義があると思います。

金子 由依

アカデミックシアター事務室

アカデミックシアター事務室 金子 由依さん

金子:起業家的思考力を育成する上で、場所があることはとても重要だと思います。起業家になりうる学生は、何か一点において突き抜けた思考を持っているため、一人になりがちです。学校・サークル・アルバイト中心に大学生活を送る学生が多い中で、起業の道を歩むことは簡単ではありません。「インキュベーションファクトリー」が、起業家を志す学生が共に成長しあえる場、ビジネスを作り上げていく仲間を見つけられる場としてあることは、大きな意義があると思います。

マインドからスキルまで

寺本:「インキュベーションファクトリー」で提供するプログラムは、大きく分けて2つあります。1つは、起業家としてのマインドを育てる「KINDAI STARTUP ACADEMY」。学習×起業体験に取り組むことで、経営スキルを体得し、起業家マインドの醸成を図ります。2018年には、「2週間で10万円稼ぐ」というお題を出し、30名の学生がそれぞれのアイデアやスキルを活かして、不動産紹介や民泊、キャリア支援などの仕事をつくりました。1位の学生チーム2週間×3タームで、合計150万円以上を売り上げるなどの好成績を叩き出しました。

僕たちがここで学んでほしいのは、10万円を稼ぐ大変さを知ることと愚直にがんばれば10万円は稼ぐことができるという事実です。世界中で何億台と売れているスマートフォンも、目の前のお客さんに一台を売ることから始まり、延長線上に大ヒットという結果があります。「KINDAI STARTUP ACADEMY」では、そのファーストステップに踏み込むきっかけを与えることを大切にしています。

寺本:2つ目は、起業家人材育成プログラム「Lean LaunchPad」です。これは事業開発に特化したプログラムで、事業創造の理論学習と具体的な事業素材を用いた実践演習の繰り返しから事業を0→1で事業をつくる経験を積んでもらいます。ACTではさまざまなイベントを開催していますが、学生が支援を求めるタイミングと必ずしも一致しているわけではありません。事業立ち上げからリリースまで中長期に渡り伴走することで、近大発ベンチャーの輩出を目指しています。

金子:他にもプログラミングを学ぶ「G’s CAMP KINDAI」、シリコンバレー研修「起業家BOOTCAMP」、「KINDAIビジコン」など起業家に求められる能力開発をサポートするプログラムを用意しています。プログラムは全て、各分野のプロフェッショナルと組んで開発しており、学生は無料で参加できます。これまで経営学部、経済学部、法学部、文芸学部、薬学部、理工学部、建築学部、農学部、さらに生物理工学部(和歌山)からも学生が参加しています。

ベンチャーが育つ土壌をつくる

金子:スタートから2年、学内でもACTの中に事業開発を学んだり、学生起業家を育成したりする場所があると認知されるようになってきました。Yahoo!LINE、みずほ総合研究所との連携したプロジェクトも形になりましたし、少しずつですが大学に新しい動きが生まれていることを実感しています。

「インキュベーションファクトリー」は、僕たちにとっても新しい価値をつくる挑戦。大学の事業開発として0→1で取り組んでいるので、学生と同じ立場です。

寺本 大修

アカデミックシアター事務室

寺本:「インキュベーションファクトリー」は、僕たちにとっても新しい価値をつくる挑戦。大学の事業開発として0→1で取り組んでいるので、学生と同じ立場です。先生役は各分野のプロフェッショナルにお任せして、僕たちは同じ挑戦者として学生と共に学びながら、時に講師と学生をつなぐコーディネーターとして立ち回る、そんな関わりを大切にしています。

来年度以降は、実際のビジネスを金銭面からサポートする仕組みも検討していきたいと考えています。今後「インキュベーションファクトリー」からどんな起業家が生まれるのか、とても楽しみです。

既定路線にはまらない人生の選択肢を手に入れる

プログラムを通して学んだ起業の難しさを糧に

山本:もともとクリエイティブに溢れることが大好きで、アート活動やデザイン、プログラミングをしていました。事務局の寺本さんと親しくするうちに、「インキュベーションファクトリー」に出入りするようになりました。

佐々木:僕は高校生の頃から起業に興味があって、起業を応援するプログラムがある別の大学を志望していました。でも受験で落ちてしまって。正直やれやれという気持ちで近畿大学に入学したのですが、入学後に「インキュベーションファクトリー」ができて、今では近畿大学に来て良かったという気持ちでいっぱいです。

左:経済学部2回生 山本 拓弥さん、右:法学部3回生 佐々木 智哉さん

佐々木:僕は2週間で10万円稼ぐ「KINDAI STARTUP ACADEMY」に参加しました。1ターム目はインバウンド関係の事業でチャレンジしたのですが、5万円しか稼ぐことができず、悔しい思いをしました。そこで何がダメだったかを徹底的に見直して。受験勉強もサボってばかりだったので、人生で一番頑張りましたね。それまで起業はぼんやりとした憧れで、ニュースで起業家を見て「かっこいいな」、「すごいな」と思う程度。でも「KINDAI STARTUP ACADEMY」に参加して、起業する決断ができました。

山本:20181月に開催された第1回目の「G’s CAMP KINDAI」に参加し、12日でプログラミングを学びました。コードが書けるようになれば、エンジニアになれるわけではありません。コードを書くと、たくさんのバグが出る。その課題をいかに解決するかは、自分のアイデアとの戦いなんです。たった2日で全てのバグを解消することはできませんが、わずかでも体験できることは、エンジニアとして生きる上で大きな糧になりました。また今の時代、インターネットは欠かせないツール。12日という短期間でつくる側を体験できることは、自分の手でサービスを生み出すきっかけを得られる意味でも有意義でしたね。

起業をキーワードに、学部横断でつながるコミュニティ

佐々木:1回生の頃は、授業を受けて帰るだけの日々でした。ACTができても「ふーん」って反応で、足を運ぶこともなくて。でも2回生になり「インキュベーションファクトリー」に関わるようになってからは、なんて素晴らしい施設なんだろうと感動しています。何かしたいと思ったとき、事務局に相談するとすでに必要なことが準備されているので、いつも驚きます。寺本さんや金子さんは、親のような存在です。

授業を受けるだけでは出会えない他学部との熱いつながりが、ここにはあります。

山本 拓弥

経済学部2回生

山本:「インキュベーションファクトリー」は同世代との横のつながりをつくってくれる、温かい場所です。近畿大学には3万人以上の学生がいますが、起業やプログラミング、デザインに関心があって、サークルやアルバイトよりも仕事を遊びのように楽しいと思っている人はわずか。授業を受けるだけでは出会えない他学部との熱いつながりが、ここにはあります。

起業に一歩踏み出すことで見えた将来の選択肢

佐々木:「インキュベーションファクトリー」に関わるまで、卒業後は絶対に起業して、事業売却したいと思っていました。でも就職した後に起業することもできるし、会社員をしながら会社経営をすることもできる。さまざまな選択肢があることに気づきました。大切なのは起業ありきではなく、自分がやりたいことを明確にもち、行動していくことであると教えてもらいました。

大切なのは起業ありきではなく、自分がやりたいことを明確にもち、行動していくことであると教えてもらいました。

佐々木 智哉

法学部3回生

山本:卒業後のことはまだ具体的に考えられていませんが、在学中に会社をつくり事業売却して、キャッシュを手にしたいです。僕はこれを起業就活と呼んでいて、卒業までに新卒でも新人研修を飛び越して事業本部長に抜擢されたり、大手IT企業からアプローチが来たりする状況をつくりたいです。卒業後も自由に生きていきたいので、ベースとなるスキルやキャッシュを在学中に蓄えたいですね。

 

偏差値では測れない、新しい基準を持つ大学になるーー。そのコンセプトを元に動き始めた「インキュベーションファクトリー」。ここから新しい事業や、世の中を驚かせるようなプロダクトが生み出されることで、起業家志望の学生がますます集まってきそうです。

「起業家になりたい」、「新しい価値をつくる人になりたい」と思った時、近畿大学に入学するという選択肢を高校生がもつ未来は、すぐそこまで来ているのではないでしょうか。もちろん、起業に興味があるという在学生は「インキュベーションファクトリー」に参加しない手はないですね。

EDITING TEAM

  • Writer

    北川 由依

  • Photographer

    北村 渉